蘭の華を愛でるように
あなたの舌が
呼びつづけた私の
名前は 偽りだったの
暗躍する影に
心を売った女
どんな命も草花のように
散らす冷たい指を持つの
たったひとつ
怖いものがある
この手を狂わせるは 恋
胸元 隠した毒
また一夜 躊躇わせ
何故あなたは 疑いもしない
優しい眼差しなの
だめ これ以上見つめないで
抱きしめて
ただふたり踊りましょう
私が黒い手套
静かに外すまで
汚れたこの街で
唯一美しい夜明け
輝くひかり受けて
生まれ変われたらいいのに
激動の時代は
人々の人生を
巻き込んでゆく
軋む歯車
止める事などできないのよ
もうひとつも
怖いものはない
この手が揺らぐのなら恋
恋した それが証し
靴元へ 落ちる小壜(びん)
もし平和という世の中なら
幸せ 巡らせてく愛
愛するだけの為に
生きられた
でも此処で踊りましょう
けして終わることない
最後のワルツを
いまあなたが
私の手を取り
指へと 嵌めるものは
赤 真っ赤な
朝焼けと同じ色の指輪なの
ああどうして
気づいていたでしょ
強くて いけない人
だめ これ以上動けないわ
抱きとめて あと少し
この瞳が
あなたを映したまま
静かに閉じるまで