革張りのシートに 凭れかけ 映した景色は 仄冥い柩の底から 見上げているよう 人の騒めき 木々揺らす風の囁き 蹄の音 すべて消えて この世には 沈黙だけ満ちています 気の遠くなるほどの長い長い道のりを いつまでもただひとり向かうのは わたしの世界のなか 生きて生きておられる あなただけなのです 召されゆく定めの 幕間を畏れはしません また永遠を 目覚めて 結ばれしを願えばこそ 絹の手套はずし受ける 窓に踊る わが心の 欠片ような春の雪 幾ひらも握りしめては 気の狂れんばかりの永い永い時の道 一条のひかり辿りつづけて 馬車を牽き走れ走れ 四頭の白馬よ 翼を得る日まで 胸が裂けるほどの悦び哀しみ抱いて いつまでもただひとり向かうのは わたしの世界のなか 生きて生きておられる あなただけなのです 馬車を牽き駆けて駆けて 四頭の白馬が 翼を得る日まで いつか 空は黄金に染まり 天馬たちは飛び立たん