召シマセ 艶薔薇
ヨリドリミドリ イロトリドリニ
わたしたちを束ねて
絹のリボン結けば
着飾ったドレスも霞むわ
紳士の腕のなかで
うっとりと開くのよ
どんな甘い恋さえ敵わない
楽園のイヴも
太古の女王も
眠る姫君も皆
わたしを愛したの
馨しく交歓しましょう
仄かに染まる指は舞って花びら
たおやかに包んだ夢は
いつか溢れる蜜のように
黄金に満ちる
世界は美しい
画家たちは競うように
この姿を描いた
文士たちは言葉に留めた
歴史浸す悲劇や
戦場の荒れ野にも
静かにわたしたちは薫る
甲冑の少女も
非道の悪女も
乞食の娘も皆
わたしを抱きしめた
触れあって交感しましょう
哀しみ恐れ祈り すべて分け合い
熟みながら真っ赤な棘は
傷つく胸を塞ぐために
巻き付いてゆく
契りの一刺しを
召シマセ 艶薔薇
ヨリドリミドリ イロトリドリニ
馨しく交歓しましょう
緑の茵 月の侍る揺りかご
やわらかに夢を喰むのは
厳かに血の通う蔦と天鵞絨の舌
秘めやかに交配しましょう
あなたは生まれ変わる 新種の薔薇に
愛惜しく種を蒔きましょう
どんな時代(とき)でも
わたしたちが咲き添う限り
世界は美しい