ぽとり落ちる首
紅椿いくつ
泥濘る土の上
まだ朽ちもせぬうち
はらり掌に
喀いたひとひらの
鮮やかな色は
わが身の中の不浄
灯る焔 花灯籠
あの人の寝枕に
「放しゃんせ」
ここは最の果ての森の
斑月の格子戸
裏と表 躙り出口
どちらへ繋がる
行くか引くか
丁か半か
卜う吐息ひと筋
窶した胸に差し込む闇は
生きて絡む
射千玉の黒髪
蹴鞠の転がる
千年鳥居を
潜れば連なる
現そみの朱紋様
鼻緒切れて
玉砂利 数珠
その足をあと一歩
「踏ましゃんせ」
女外道 けもの小径
夜叉ノ池の畔へ
愛と悪と慾と
交じり合って目合って
恋の骸 流れ堕ちて
胎む夢の血肉よ
見送りましょか
奇麗な態で産まれ変われ
着せよ絹帷子
「死んであなた何処に逝くの」と
真白い目を向け
訊くのは誰ぞ
時は戻る 百鬼夜行
追って追われ消えゆく
つづく影の赤毛狐
後は恨と鳴け
男外道 けもの小径
夜叉ノ池の此方へ
見送る背に朝日の白刃
ここは最の果ての森の
斑月の格子戸
裏と表 躙り出口
どちらも塞がる
行くか引くか
刺すか抜くか
赤い糸のひと針
息を殺した夜毎の闇に
生きるワタシ
射千玉の人形(ひとがた)